ドラムを演奏するようになってかれこれ数十年が過ぎようとしています。昔はインディーズでバンドなどをやっていたりもしたわけですが、名実共におじさんになった今現在は趣味で細々と遊びつつ、YOUTUBEでいろんな方のドラム演奏動画を見ては己との実力差に嘆く日々が続いています。
そんな自分ですが、過去には電子ドラムを自宅に導入しがっつりと毎日家で練習していた時期がありました。RolandのV-Drum TD-3KW-Sという比較的安価なセットを購入し、その後メッシュパッドを単体で買い足していって最終的にはTD-12という音源モジュールに変更、と結構な額を使ってそれなりのセットにした記憶があります。
少し前に親戚の子から「電子ドラムを買いたいんだけどどれを選んだら良いか分からない」と相談をもらい、待ってましたとばかりに長々と注意点や選び方などを書いてメールを送ったのですが、改めて自分で読み返してみると「コレ結構分かりやすいんじゃないか?」と思い、今回記事にしたためてみました。電子ドラム初心者の方の何か参考になれば幸いです。
目次
電子ドラムを買うときの注意点
早速ですが、電子ドラムを選ぶにあたっての注意点をご紹介します。どの商品にするか、具体的に選ぶ前に前知識として知っておいたほうが良いことが3つほどあるので、まずはここを認識しておいてください。
注意点1.ドラム椅子とキックペダルがセットで付いてこない商品もある
電子ドラムによっては、ドラム用の椅子(スローンと言います)とキックペダルがセットで付いてこないものもあるので必ずセット内容は確認しましょう。ドラムを叩くにあたって、スローンは最悪家庭にある椅子で代用できる場合もありますがキックペダルは必須なので、セットになっていない場合は別途購入する必要があります。キックペダルといってもピンキリなわけですが、もし単品で購入するとしたら、Pearl、TAMA、YAMAHAあたりの1万円前後のもので十分だと思います。
単品で買うにしろ、セットで付いているものを使うにしろ、ドラム経験が増えていくと「もっとこうしたい」が出てくると思うので、その段階になったら数万円使って自分に合うキックペダルを探すのが良いと思います。
また、スローンは家庭用の椅子で代用できると書きましたが、電子ドラムの高さに丁度良いものが必ずあるとも限りませんし、スローンは細かく高さ調節できるので自分のフォームを固めやすいという利点があります。なので、安価なもので構わないのでセットについていない場合は、やっぱりこちらも個別で購入することをおすすめします。
ちなみにご存知ではない方もいるかもなので一応説明をすると、キックペダルとスローンというのは、下の画像のようなパーツになります。キックペダルは足でバスドラムを叩くためのもの、スローンはそのまま椅子です。
注意点2.パッドの打面の素材はゴムとメッシュ地の2種類ある
電子ドラムは大きく分けて2種類あります。それが、パッドの打面の素材がゴムかメッシュ地か、というものです。この2つは同じ電子ドラムという括りではあるものの、個人的には結構別物なイメージがあります。
ゴムの特徴
- 練習パッドに多い素材。
- 打面が固く跳ね返りが強いため手首のトレーニングには良い。
- 本物のドラムとは感触が大きく違うので、叩いた感触のリアル感はメッシュ系より少ない。
- 打音が結構する。
メッシュ地の特徴
- 本物のドラムと近い感触で叩ける。
- チューニングキーを使って打面の張り具合(テンション)を調整できるものもある。
- ゴム系の商品より値段は高め。
- ゴムより打音が静か。
個人的にはメッシュ地一択ですが、人によってはゴムのほうが好みという方もいるかもしれませんので、どっちが自分に合うか、は実際楽器屋さんなどに行って試奏してみてから選ぶと良いと思います。
注意点3.電子ドラムは振動がとにかくすごいので対策は必須
電子ドラムも打面を叩いた時には割りと大きめな音がするので、それなりの防音対策も必要ですが、電子ドラムで重要なのはどちらかというと防「振」のほうです。特にキックペダルを踏み込んだ時に床に伝わる振動がかなり大きく、個人的な体感としては、木造の一戸建てであれば家全体に「ズシン」という振動が伝わるくらいのイメージ。
もちろん家の作りによってはそこまで響かない可能性もありますが、最悪それくらいを想定していたほうが良い気がします。少なくとも、2階で叩いたら真下の部屋は眠れないレベルの振動だと思います。
なので防振対策は必須なのですが、やり方はいくつかある&どんなに対策をしても振動をゼロにすることはできません。たとえばドラム専用の防振マットなどもいろいろと売ってはいますが、値段がそこそこするのと、それでも振動はしてしまうものなので、お金をたくさん出せば良いというわけではなく、予算と相談しながら試行錯誤したほうが良いと思います。
世の中の電子ドラム愛好家のみなさまも防振対策にはいろいろと苦労されているようで、YOUTUBEで「電子ドラム 防振」とかで検索してみると、たくさんの動画が出てきて、本当にみんないろんなこと試してるんだなあというのが実感できます。
個人的には以下の動画の対策が参考になっておすすめです。結構ガチ目の対策ではありますが、ここまでやらなくとも、この中で自分ができそうなものだけピックアップしても良いと思うので一度見ておくことをおすすめします。
ちなみに、自分が電子ドラムを使っていた時は小さなアパートに住んでいたのですが、下の階が店舗で、隣の部屋とは廊下を隔てていたため、あまりそこまで防振対策が必要だったわけではないですが、それでも
- 一番下にコルクのパネルマットを敷く
- その上に少し固めのカーペットを敷く
- その上にすのこを2段重ねて置く
- その上にドラム用の防振マットを敷く
- その上に電子ドラムを置く
という感じで対策をしていました。大きさとしては縦横150cmくらいで十分だったと記憶しています。
電子ドラムを選ぶ際のポイント
電子ドラムを発売しているメーカーはいくつかありますが、やっぱり初めて買うという方には、RolandかYAMAHAをおすすめします。電子ドラムの2大メーカーとして長年に渡り改良を続けてきたその電子ドラムは、基本的にはどれを買ったとしてもハズレを引くことはないと思います。
その上で、電子ドラムを選ぶ際に考えるべきポイントをいくつか紹介します。
まずは使い方を考える
基本中の基本ではありますが、まずは「自分が電子ドラムを買う目的」をしっかりと見定めておきましょう。目的は人それぞれだとは思いますが、たいていの場合
- 生ドラムを家に置けないのでその代用品として練習用に
- バンドとかは組んでないが趣味として電子ドラムを触ってみたい
- 生ドラムのセットに組み込んで同期やアンサンブルの幅を広げるため
この3つに大別できるのではないかと思います。そして多くの人はひとつめの目的なのではないでしょうか。もしくは2つめの目的の方もいるかもしれませんが、今回はひとつめの人を対象としたポイントをご紹介します。ちなみに3つめの目的という方はあまり見たことはないですが、神保彰氏の様にドラムアンサンブルを広げたいガチドラマーの用途だったりします。
生ドラムの代用品として練習目的で買う場合のポイント
個人的にはメッシュ地一択
前述のとおり、打面にはゴムとメッシュ地の2種類ありますが、練習用に使うのであれば個人的にはメッシュ地一択だと思っています。やっぱりメッシュ地のほうが生ドラムを叩いた時の感覚と似ているので、スティックコントロールであったり、打面の跳ね返りからの体全体の動かし方を生ドラムにも活かせるという強みがあります。
ゴム素材のものは手首を鍛えるのには向いていますが、それであれば数千円で買えるゴムパッドで十分だと思うので、価格面以外であえてゴムの電子ドラムを選択するメリットはないのかなと思います。
最初は低価格モデルを買ったほうが良い
電子ドラムといってもピンキリで、10万円台で買えるものもあれば数十万円するものもありますが、いきなり数十万円のモデルを買うことはあまりおすすめしません。そもそもそんな人いないかもですが。
電子ドラムは主に「音源モジュール」と「パッド」によって価格が変わってきますが、高価なモデルは往々にして、高性能な音源モジュールが付いてきます。しかしいきなり高性能な音源モジュールを手に入れても使いこなせないことも多いと思いますので、まずは低価格なモデルをとにかくいじりたおして、その音源じゃ物足りなくなったら差し替える、くらいのほうが結果的にコスパが良い気がします。
もし経済的に余裕があるのであれば、低価格モデルを買った上で、足りないパッドを追加で買うのが良いと思います。たとえば、たいていの電子ドラムはシンバルパッドが2枚しかついてきませんが、たとえば生ドラムでクラッシュ2枚、ライド1枚、チャイナ1枚というセッティングで叩く人であれば、シンバルパッドを2枚追加すれば、より生ドラムに近い練習ができるんじゃないかと思います。
ただ、音源モジュールによってはインプットの数が少ないものもあるので、パッドを追加する際は音源のインプットの数と種類も必ず確認しましょう。
スピーカーはいらない
セットによってはスピーカーが付いてくるものもありますが、正直いらないと思います。たいていの場合、セットで付いてくるのはそれなりに大きいスピーカーなので、ただでさえ場所を取る電子ドラムにさらにスピーカーを置くスペースが必要になってしまいます。
というか電子ドラムで練習する場合はそもそもスピーカーで音を出す必要がなく、ヘッドホンで十分です。練習だけではなくストリートライブなどで電子ドラムを使う予定がある、という方にはアリかもしれませんが、自宅に置いて練習用に、という方であればスピーカーはなくてOKです。
電子ドラムで練習する際の注意点
次に、個人的に経験した「電子ドラムで練習する際に気をつけておいたほうがいいこと」がいくつかあるので、それも併せて紹介します。
電子ドラムは簡単に「良い音」が鳴る、ということを覚えておく
電子ドラムは所詮電子楽器であり、叩いた衝撃を感知してデジタル音源に変換して音が出ます。言い換えると、適当に叩いてもデジタルでシミュレートされたドラムの「良い音」が鳴ります。
一方生ドラムは「モノ」なので、叩いた場所によって鳴る音が違います。きれいに鳴るポイントを叩けばスコーンときれいな音が出ますが、適当に叩いたらきちんと鳴ってくれず、どん詰まった音がします。
なので、電子ドラムだけで練習してきた人がいきなり生ドラムを叩くと全然きれいに鳴らなかったりします。電子ドラムで練習するのは良いですが、同じくらい生ドラムで練習することも大切です。
生ドラムで「再現できる」セッティングを考える
電子ドラムのパッドは薄くて小さいので、かなり自由にセッティングできてしまうのですが、もしかしたらそのセッティングが本物のドラムでは物理的に不可能な位置関係の場合もあります。
生ドラムは電子ドラムと比べて口径も大きく、胴の深さもあるので、電子ドラムでできたセッティングを生ドラムで再現しようとしても、タムやスネア、シンバルといったパーツ同士が干渉して再現できないこともあるので、あくまで生ドラムでも再現できるセッティングを意識したほうが良いです。
生ドラムを叩く時と同じ叩き方を意識する
家で電子ドラムを使った練習をする場合、音や振動がなるべく大きくならないように、とどうしても控えめに叩いてしまいがちですが、控えめに叩くクセがついた状態で練習を続けてしまうと、その叩きグセがついてしまい、生ドラムでうまく叩けなくなってしまう可能性があります。なので練習する時は生ドラムを叩くイメージでしっかり叩いたほうが良いです。結果、めっちゃ振動は発生してしまいますが。
最後に:スタジオに通える環境なら個人練習にお金を使ったほうがいい
長々と書いておいて、最後にちゃぶ台をひっくり返すようなことを言いますが、高いお金を出して電子ドラムを買って家で練習するよりも、近くに音楽スタジオがあるのであれば、個人練習に通い詰めたほうが良いと個人的には思っています。
結局、電子ドラムはどんなに技術が進歩しても生ドラムとはやっぱり別もので、生ドラムを上手くなりたいという目的であれば、生のドラムをとことん練習するのが最短だと思います。
まずは、自分に合ったスティックとキックペダルを買って、何度もスタジオのドラムをいじくり回して、ドラムの構造なども含めて知識と技術を高めていくのがいいんじゃないかと、おじさん的にはそんな風に思う所存であります。